「82年生まれ、キム・ジヨン」

「見えざる女性の壁」

監督:キム・ドヨン
脚本:ユ・ヨンア
原作:チョ・ナムジュ

出演:チョン・ユミ、コン・ユ

【あらすじ】

キム・ジヨンは、OLだったが結婚して出産にあたり会社辞めて子育てすが・・・

【映画考察】

女性の幸福とは、結婚し夫に尽くし子供を産み育て、いい母親になることだと暗黙の了解があり、男性中心社会は日本だけでなく韓国でも同様であった。キム・ジヨンは82年生まれ、映画の設定で24・5歳とすれば2006・7年頃の設定になるのだろう。今から20年以上の前の時代だ。

ジヨン(チョン・ユミ)は満足する仕事をしていており夫(ユン・ユ)と結婚し夫の母親から子供を早く産むように言われ続け夫も子育てに協力すると言うがジヨンは「子供を産むことは私の人生が180度変わる」と言う。この夫とのやりとりに女性のおかれている真実をすべて表している。

子供が産まれてすぐは、一日中面倒を見るのは母親で夫は以前と変わらず会社に行く。ジヨンは女性から母親に変わってしまっのだ。そして精神を病んでいく。たとえ夫の誠実なサポートがあってもだ。ここにおいて自立して自分の仕事を持ち生活する女性としてのジヨンは存在しない。

20年後の今の日本ではどうか。育児休暇などの制度はできたが本質は何も変わらない。出産後仕事を続けたにしても「いい母親」を求められる根底は何も変わっていない。原作や映画が韓国で大ヒットしたのは、ジヨンと同じ立場、その時を過ぎた女性達もジヨンの追い込まれた女性に対する男性中心社会の見えない壁に翻弄される姿に自分を重ね合わせたのであろう。

ぜひ日本の女性達にも見て欲しい映画だ。昭和の男が妻に対してとっていた行動を猛省させられ、私にはもう遅い、しかし日本の若い男性にもぜひともこの映画を見てもらいたい。

ジヨン役のチョン・ユミは、大げさなアクションではなく顔の表情の変化、陰影だけでジヨンの微妙な感情を表現する演技は素晴らしかった。夫役のユン・ユも優しい夫を演じながら病におかされていく妻を心配する姿を好演していた。そして精神的な病を癒すのは夫を含め家族の協力が必須なのだ。ジヨンの母親、姉・弟の言動に救われる。ラストシーン、ジヨンと夫が手おつないで歩く姿にほっとした。

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